子どもたちの味方!まるわか先生に聞いてみた! [第1回]知りたかった〜!赤ちゃんの成長と母乳
やっと終わった〜!からすぐに始まる「子育て」…。出産が終わって訪れる幸福感と、睡眠不足のストレス…赤ちゃんには元気に大きくなって欲しいけど、時々辛い母乳育児。母乳足りてる?ちゃんと大きなってる?母乳とミルク、何が違うの???
「赤ちゃんの成長と母乳」の疑問を、 子どもたちの味方!子どもの成長の専門医「まるわか先生」に聞いてみました。
Q1. 母乳が足りているのか、いつも迷います。
母乳の量が足りているのかを心配されている方は多いですね。授乳の回数が多いことで母乳が不足しているのでは!?と心配されることもあります。産後すぐは赤ちゃんが欲しがるときに母乳をあげることが大事なので、1日8回と言われていますが、むしろ8回以上が目安と考えてください。少し大変ですが、母乳は90分で消化されること、1回の授乳量がミルクより少ないことが多いので頻繁にあげることが大切です。
また授乳と授乳の間に赤ちゃんの機嫌が悪いことが続くと、それを母乳不足のサインと思ってしまう場合もあります。でも実は何か不快なことが他にあって、母乳は足りているのに機嫌が悪いこともあります。そんな時は縦抱きでしばらくあやしたり、おむつをみたり、部屋の温度を調整してみるなどしてみてください。母乳が足りているかどうかは体の状態や体重にもよりますので、ぜひ小児科や助産院などに相談してみてください。
Q2. 赤ちゃんの体重が増えなかったので、母乳とミルクの混合にしたいのですが、ミルクの足し方で気をつけた方がいいことはありますか。
まずは母乳をあげるようにしてください。その上でおすすめのミルクを取り入れ方は、20時〜22時頃の授乳にミルクを足してあげることです。お腹がいっぱいになった赤ちゃんが満足して眠る時間が増えますので、頻繁な授乳で疲れたお母さんの体を休めるためにも一緒にぐっすり眠りましょう。また昼間に母乳で15分ほど授乳した後に、欲しがるサインがある場合にミルクを作って足すようにしてみましょう。
Q3. 「母乳でつく免疫がミルクではつかない。」と周りから言われますが本当ですか。どうしてもミルクで育てることになった場合、その免疫を補うことはできますか。
母乳には免疫グロブリンや抗炎症因子といった免疫物質が含まれています。とくに初乳(産後すぐから5日目ぐらいまでの母乳)には、免疫物質が多く含まれています。もし可能であれば、その時期の母乳だけでも赤ちゃんにあげられるといいでしょう。ただ、お母さんの体調や状況によって母乳があげられない場合もあります。ミルクには免疫物質は含まれませんが、母乳よりビタミン類が多く、国内メーカーのものであれば成分を母乳に近づけて作られています。母乳中の免疫を補うわけではありませんが、免疫は人混みを避ける、家族が感染予防(手指衛生など)をすることで、赤ちゃんを感染から守ることができますよ。
ミルクで授乳する場合でも、しっかりと抱っこして授乳をしてあげてください。そうすることで赤ちゃんも授乳する人も気持ちが安定して、良い効果が得られます。
Q4. 保育園に預けることになりました。完全母乳はあきらめるしかないでしょうか。
園によって母乳育児への考え方や母乳の運用方法が違いますので、対応してもらえるのかを保育園に問い合わせてみてください。保育園でもほ乳びんで母乳をあげてもらえる場合は、時間のあるときに搾乳した母乳を持っていくことになります。その場合は、搾乳前に手洗いや手指消毒を行って、消毒したほ乳びんに母乳をしぼり、母乳専用のパックに入れてすぐに冷凍します。搾乳した日を書くところがあるので、いつの母乳かわかるようにしておきましょう。保育園に保冷バッグを使って冷凍したままの母乳を預けましょう。少しでも溶けている場合は使わず、再冷凍などはしないことが大事です。
母乳をあげることに対応できない保育園の場合は、園に預けているときはミルクと割り切って、預ける前とお迎えに行った後に母乳をあげましょう。その時間がきっと仕事で疲れたお母さんを癒してくれるます。保育園に預けるまで母乳だった場合、ほ乳びんに慣れるように、2週間〜1ヶ月前から準備してください。あらかじめその予定があれば、生後1ヶ月すぎたころから週に1回、お母さん以外の方がほ乳びんで授乳しているとスムーズと言われています(参考;日本母乳哺育学会雑誌;14巻2号、2020年)。
もし預ける前にほ乳びんにしっかり慣れていなくても保育士さんは保育のプロなので何とかしてくれる場合がほとんどです。安心して預けて、おうちに帰ってからの赤ちゃんとの時間を楽しんでください!
Q5. 授乳期間中は母乳に栄養が取られるので、お母さんは骨粗鬆症に気をつけてと言われました。カルシウム不足だと赤ちゃんの成長にも影響がありますか。サプリメントでカルシウムを飲んで補ってもいいでしょうか。
カルシウム不足も気になりますがですが、実はビタミンDというカルシウムの吸収を促す、ホルモンの働きもある脂溶性ビタミンが注目されています。このビタミンDが不足すると赤ちゃんの成長にも影響することがあります。ビタミンDは日光を浴びることと、食事で摂取することが大切です。しかし、ビタミンDが含まれる食品は限られていて、魚介類やきのこ、卵類に含れます。
授乳中のお母さんが日を浴びる機会が少なくなったことや、魚介類やきのこを食べる機会が減っていることなどから、近年ビタミンD不足が増えていると言われています。完全母乳の場合、赤ちゃんやお母さんへの経口液体のビタミンDサプリメントの服用もふくめ一度小児科医へ相談しましょう。
Q6. 辛いものが大好きです。授乳期間中に食べると赤ちゃんの成長によくないでしょうか。また辛いものを食べた後やお酒を飲んだ後、タバコを吸ってしまった後などは時間をどれくらい空けてから授乳した方がいいですか。
辛いもの、カレーやキムチなどはあまり神経質に制限せず、食べ過ぎないようにすればいいです。その後の授乳時間もあまり気にしなくていいと思います。飲酒に関しては、ビール(アルコール度数;5%)350ml、ワイン1杯140ml(アルコール度数;12%)ぐらいまでの量であれば、授乳直後に飲み、飲んだ後2時間以上あけて授乳しましょう。
ただし、出産後1ヶ月より前や、それ以上の飲酒は控えましょう。タバコは乳幼児突然死症候群との関連や赤ちゃんの気管支への影響などから禁煙を勧めますが、どうしてもやめられない場合は母乳育児を続け、本数をできる限り減らして喫煙後は3時間以上あけて授乳しましょう。
子どのの成長については「体」も「心」も、色々気になるところです。データで見られる赤ちゃんの成長を紹介します。
母子手帳に載っている乳幼児の発育曲線は、母乳育児の赤ちゃんだけを対象としたものではありません。母乳のみでの育児の場合は「ゆっくり体重が増える」子どもが多いとされていますので母乳育児の場合は、「日本母乳哺育学会の発育曲線」を活用してもらうと良いと思います。ちなみに身長もゆっくり発育するとされています。もちろんこの発育曲線内でも体重が減っている場合は、小児科に相談に来てください。
赤ちゃんの成長について「頭囲の発育」と「精神運動発達」を一緒に見守ることが大切です
また、赤ちゃんの成長について「頭囲の発育」と「精神運動発達」を一緒に見守ることが大切です。頭囲の増加は、脳の発達と密接に関連していますので、乳幼児期の発育をみるときに、体重や身長だけでなく頭囲にも注意をしていくことが重要です。そして、そこに発達の評価も加えて行います。
生後3、4ヶ月では、もちろん首のすわりの評価や耳の聞こえについて聞くことも大事ですが、「声を出して笑うことができるのか」、「じっと見つめ、少し視線を動かすことが出来るのか」などを確認します。生後6ヶ月前後も、実は発達の評価には重要な時期です。寝返りやお座りの評価に加えて、「物をつかむか」、そもそも「興味を持って手を伸ばすか」などを見ることが大切です。人見知りが早い子もいれば、あまり目立たない子もいますが、お母さんやお父さんから少し離れてベッドへ寝たときの表情などを細やかにみることが大切になります。
私はこれまで新生児医療に長く関わってきて、NICUという新生児の集中治療室から退院した赤ちゃんを継続的に診せていただきました。早産のお子さんだけでなく、呼吸障害で数日間入院した満期産のお子さんも、1ヶ月健診はもちろん、生後6ヶ月前後、生後9ヶ月前後、1歳、2歳まで診察させていただくことが多かったです。生後9ヶ月は無料券などで健診を受ける場合が多いと思いますが、その前から継続してお母さんやお父さんと関わることがとても大きなな経験となりました。その経験から、「頭囲の発育」と「精神運動発達」、そして養育する方の育児への喜びや不安を見守ることがとても大切だと考えるようになりました。
母乳で悩む、ママたちへ。
最近の傾向として、「母乳をあげたい」と考えるお母さんが増えている一方で情報過多のためにその方法に悩んでいるお母さんも増えているように感じます。完全母乳という言葉が1人歩きしてしまって、全ての授乳が母乳でないといけないと悩まれていることもあります。母乳育児にとって大切なのは完全に母乳をあげることではなく、ミルクを上手に利用しながら、赤ちゃんが健康で、お母さんやお父さんが子育てを楽しめることだと思います。
私はその支援をすることを、診療上心掛けています。母乳育児について「つらい」と感じるときは、その時期によっても解決方法が変わってきます。おそらくその時もインターネットを検索して、マッサージをする、リラックスをする、体を温めるなどのアドバイスを実践されると思います。もちろんそれも大事ですが、一番にしてみてほしいのは「人に話すこと」です。身近なパパや両親でもいいですし、産院の助産師さんや健診を受けている病院やクリニックなどもいいかと思います。
パパも「母乳に関してはママの領域だから」と、どう関わっていいか悩んでいることもあると思いますが、私のようにお産や小児に関わる医療者は、私たちを頼って欲しいと思っています。ぜひ、1人で悩まずに、みんなでお子さんを育てていきましょう。
上西のびしろクリニック 院長 圓若かおり(まるわかかおり)
福井大学 医学部卒業後、名古屋市立西部医療センター 小児科、あいち小児保健医療総合センター 内分泌代謝科、日本赤十字社 愛知医療センター 名古屋第二病院に小児科医として勤務。2022年3月1日、春日井市に小児の低身長や思春期早発症、糖尿病、染色体疾患などの慢性疾患に特化したクリニック「上西のびしろクリニック」を開院。小児科医・3人の子どもを持つママの目線から、名古屋ベビータイムズで連載を予定。