心理学コミュニケーターの都竹悦子さん[column,2]
~飛騨高山での3世代同居~

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これは、娘が7歳の時に書いた、作文の中の言葉です。

クラスでは、お友達も先生も「そんなに年の多いおじいちゃんなの」と驚かれたと言います。父が46歳の時に、はじめて授かった子供であったという私。自分自身も35歳になってから始まった、少し周りよりも遅いスタートだった子育て。わが子たちは、周りのみんなよりも少し大きな「ジェネレーションギャップ」を感じながら育っているようです。そこには、いい面もあり、逆の面ももちろんあります。

私の母が他界してから、一人で暮らしていた父もどんどん高齢になり、約5年前に始まった、飛騨高山での3世代同居。住み慣れた名古屋との違いや、「親と暮らす」ことの難しさ、さらには下の子(第2子)の妊娠・出産期も重なり、引っ越した当初は「大変」のひとことでした!

「近くに暮らしているけど別世帯」とか、「二世帯住宅だけど顔を合わせるのは週末だけ」、「ばぁばに子供たちを預けて夫婦で夕食にお出かけ」なんて話を聞くと、うらやましくてたまらなかった時期もありました。

隣の芝は、青く見える。

子供とだけ接する、という比率が高い子育て時期には、余計にSNSなどで断片的に目にする隣の芝が青く見えるのかもしれませんね。親との距離感も、自分自身に子供ができると、より一層難しいものに代わるような気がします。父や叔母たちからもらう「アドバイス」も、若いママ友から聞く「イマドキの育児」とは大いに違って、「良かれと思って言ってくれているというのはわかるんだけど…」と、自分が思っていた育児と周りが勧める育児とのギャップで、大いに悩んだりもしました。

分かりやすいところでいえば、「おむつ」。今のママが使うのは、紙おむつが大半でしょう。そんな今の時代にあって、私は子供二人を布おむつで育てました。

ある日叔母から言われたのです……。

「私が子育てをして頃は、なんでも自分で作ったわ。ねんねこっていう、おんぶ紐も自分で作って、それで子供をおんぶして。その子のおしめを晴れた日に盛大に干すの!バーッと、何十枚も並べてね。白いおしめが青い空の下でひらひらはためいて…背中にはあったかい子供の体温が伝わってきて。あぁ、これが幸せなんだなって思ったものよ。おしめだって、おなかに赤ちゃんがいる間にたくさん縫っておくと一針一針赤ちゃんへの愛情が募る気がしてね…。」

こんな、親世代からの「私が子育てをした頃は…」という話。この言い回しで始められる言葉は、単なる思い出話ではなく、「提案」と受け取るのが、関係を円満にしておくコツです。

こんな思い出話によって「提案」された内容を挙げてみると…

残念ながら、私はおむつは手縫いはできなかったのですが、ほかの3つの「提案」はクリア。おんぶ紐はハンドメイドの本もたくさん出版されているんですよね!ハンドメイドしました。家事の時はおんぶにして、布おむつも実践しました。

赤ちゃんの排尿回数は1日10~20回と言われているのだとか。そのたびに紙おむつを替えていては、コストがかさむ!布おむつを何十枚もそろえて、という準備の費用(イニシャルコスト)は、布おむつのほうが多くかかりますが、「毎日10枚以上の紙おむつを使う」という日常的な出費(ランニングコスト)を考えれば、布おむつのほうが断然経済的だったんです。おそらく、2,3か月で元は取った計算です。

しかも、やってみると意外に面倒でもなかった!バケツに洗剤と水を入れ、おむつを替えるたびにためておく。一日経つ頃にはバケツもいっぱいになってくるので、これをただ洗濯すればいい。簡単。

また、布おむつは取り替え頻度が多いので、赤ちゃんとのスキンシップが増える、ということもよく言われています。4歳までの乳幼児にとって、どれだけ接触を持つかがその後の情緒の安定を左右すると言われているだけに、我が家では良い選択だったと考えています。

そして、そんな布おむつ生活のある日。

東の空に白い乗鞍岳が美しく映えていた、青空の綺麗な晴れた日、並んで干された白いおむつが風にはためくのを見て、「あぁ、これが幸せなんだなぁ」を実感したんです。

叔母の、言った通りだったわけですね。ここで、実感しました。叔母からの思い出話という形をとった「提案」は、私に、かつての自分が体験した幸福を味わってほしいからのものだったのだ、ということを。

私たちの親世代は、「提案」をいろんな形で伝えてくれますよね。それが時にはうっとうしかったり、面倒だったりするのも事実。ですが、それだけではない。「提案」4つのうち、1つ出来たら、その1つについて少し大げさにでも感謝をすることで、私たちの親世代は、きっと喜んでくれるような気がします。だって、「いいことだと思うから」伝えてくれるわけですから。

「もう、時代が違うんだから黙っておいて、放っておいて。」とシャットアウトしていたら、私は青空の下の白いおむつという情景を見て、ちょっと涙が出るくらい感動することも体験できなかったんだろうと思います。

親世代の子育てを、少し追体験する。

これは、親との関係維持にも、また自分自身にとっても、とてもいいことなのかもしれません。

 

★ PROFILE


都竹 悦子 (つづく えつこ): ナレーター、司会者、心理学コミュニケーター

2000年、ZIP-FM ミュージックナビゲーターコンテストで準グランプリを受賞し、翌年デビュー。2015年まで14年間ミュージックナビゲーターとして活躍。落ち着いたトーンの語り口、心温まるナレーションが人気のナレーターでもある。2014年、NPO法人日本次世代育成支援協会認定心理カウンセラーに。2015年からは、心理学と自身の経験を元に「子育て」「恋愛」「コミュニケーション」をテーマ にした講演活動、執筆活動もスタート。プライベートでは、2児のママとして子育て奮闘中!

◆所属事務所:パスト・プレゼント・フューチャー
https://ppfppf.com/etsuko-tsuzuku/
◆都竹悦子オフィシャルサイト
http://etsuko-tsuzuku.com/

都竹悦子さんの記事[vol.1]はこちら

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